Greenpoint グリーンポイント
グリーンポイント北西部に開発された住宅の一つ
NYCフェリー:Greenpoint Landing
場所と交通
グリーンポイントはブルックリンの北西端に位置し、西はイーストリバー、南はウィリアムズバーグ、南東は幹線道路 (Brooklyn Queens Express Way) を境にイーストウィリアムズバーグに、そして北は水路 (Newtown Creek) を境にロングアイランドシティーに接しています。南北に走る Manhattan Ave に沿って、地下鉄ラインが通っています。エリアの東部、特に Newton Creek 沿いは古くからの工業地区ですが、その他は住宅および商業地区となっています。
地下鉄に乗ってマンハッタンに出るには、ラインを南下して
ラインに乗り換えるか、北上してロングアイランドシティで
または
ラインに乗り換えます。他にNYCフェリーが利用でき、国連などミッドタウンの東側で勤務される方や、ファイナンシャルディストリクトで勤務される方に便利な交通手段です。
産業の変遷
19世紀前半から、造船や鉄鋼等の重工業、窯業、木材加工業、その他製造業がイーストリバー近くで盛んになり、今でも19世紀後半から20世紀初めの住宅 (特にタウンハウス) が残っています。その当時からポーランドからの移民が多く、米国ではシカゴに次ぐ大きなポーランド系コミュニティーを形成されました。二度の世界大戦中に逃れてきたポーランド移民もいました。戦後は製造業が他の都市に移転し、グリーンポイントは一度衰退します。
2000年代から再び発展を始め、ウィリアムズバーグと同様、マーケティングエージェンシー、出版・デジタルメディア会社、デザイン会社、ソフトウェア開発会社、その他スタートアップビジネスが多数興りました。歴史的建造物に指定されている Eberhard Faber の鉛筆工場の建物の一つは、スタートアップビジネスのオフィスなどに使われています。2018年頃からはソフトウェア開発などのIT業界に従事する住民が相当増え、デザインやマーケティングに従事する住民数は減少しています。
発展の一つの契機は、2005年にニューヨーク市がグリーンポイントからウィリアムズバーグにかけてのウォーターフロント地区のゾーニング(用地利用規制)を変更し、高層集合住宅の建設を認めたことにあります。
住民の変遷
ポーランド系アメリカ人のコミュニティーは今も強く残っています。グリーンポイントを足掛かりに他の地域に進出した移民もいる一方、19世紀から続く家系は今も多いといわれており、当時からの教会も現存しています。加えて、1981-83年にポーランド軍事政権が戒厳令を敷いた際に、多数のポーランド人の若者が移り住んだため、コミュニティーやポーランド語話者の維持につながりました。そういった移民の中にチェスの有力棋士も多数いたことから、グリーンポイントは「ブルックリン唯一のチェスクラブ」とも呼ばれました (1984年のニューヨークタイムズの記事参照)。Manhattan Ave 沿いには今もポーランド系のレストラン、グローサリー、肉屋、ベーカリー、教会が幾つも見られます。ガラス窓の向こうに並ぶロールキャベツには思わず足が止まります。
2000年代以降は、ここで子供時代を過ごした人が戻ってきたり、国内外から新しい人口が流入しました。高級住宅の増加と軌を一にして、人種を問わずソフトエアエンジニアなどの新しい職種の住民が増え、モダンなレストランが増え、いわゆるグルメ・スーパーマーケットができるなど、ニューヨークの中でも相当速い変化が起こっています。
住宅
ゾーニング (土地利用区分) の変更により中層・高層集合住宅が開発されたのは、イーストリバー沿いと、南のマッカレンパーク周辺です。イーストリバー沿いの北部には Greenpoint Landing と名付けられた最大の住宅開発プロジェクトが完了し、2018年から2022年頃の間に、9か所に大型住宅群が完成しました。ウォーターフロントに遊歩道、公園、フェリーポートもできています。
Manhattan Ave から東は主に低層の建物からなる静かな住宅街で、その中にカフェ、ベーカリー、2020年に2千3百万ドル($23 million)を投じて建設された図書館などが点在しています。点在する築浅のタウンハウス(3-4階建ての小型集合住宅)は、複数戸のまとまった投資対象としての魅力があります。
住宅価格は、これまで他の地域より低かったものの、速いペースで上昇しており、NY市はグリーンポイントを「ジェントリフィケーションが起こっている地域」と分類しています。
レストラン
ポーランド系レストランやベーカリー、ベーグルサンドイッチなどジューイッシュの伝統食、フィッシュマーケットに併設されたシーフード料理の他に、日本、アジア諸国、中東、イタリア、フランス、アメリカ料理まで様々な分野の新世代のレストランやベーカリーが存在します。和食やそのフュージョン料理では、Dashi Okume (だし尾粂) が入った建物とその周辺にいくつか集まっています。ビールや日本酒の醸造所があるのもユニークです。
グリーンポイントのレストランは、ウィリアムズバーグの人気の延長上に発展している印象です。2000年代以降に住宅が開発されたという点ではロングアイランドシティと似ていますが、洗練されたお店の多さやお店の多様性で、グリーンポイントの方が上回っています。
ビジネスはクリエイティブからテック優勢へ
グリーンポイントとウィリアムズバーグ両地域を対象とした国勢調査(Census)によると、2017年に多かった住民の職種は、各種管理職 (5.9%)、公立学校の教師やそのアシスタント (計5.13%)、そしてデザイナー (4.49%)でした。ソフトウェア開発者は 1.82%で、まだ少なめでした。この分布が急速に変化しており、2022年の調査では、ソフトウェア開発者が 3.72%で第3位まで上昇し、グラフィックデザイナーとその他デザイナーの合計は 2.47%でした(集計の明細が変わっていましたので合算しました)。
上記は個人の職業による集計ですが、勤務先の業界の集計でも似た状況です。2017年には、広告・PR企業に勤める人は4.90%、コンピューターシステム設計企業に勤める人は 3.59%でした。2022年になると、後者が5.84%、前者は 5.06%と、順位が入れ替わりました。
ニューヨークシティの産業は、一般的なイメージと違ってITの比重が高いのですが、その比較的高所得のITエンジニアがこのエリアに増えていることは、急速なジェントリフィケーションが起こっていることの一つの説明となります。