Oxford Property Group

Roosevelt Island ルーズベルト・アイランド

Cornell Techの南の芝生から。川の向こうはロングアイランドシティの高層ビル。

FRoosevelt Island, NYCフェリー
 エリア概要

ルーズベルト・アイランドはマンハッタン島とクイーンズの間の細長い島で、行政区分ではマンハッタンに含まれます。20世紀前半には大型の病院や隔離施設しかなかったようですが、1970年頃から、ニューヨーク州が主導して島の開発が始動し、現在に至ります。"Roosevelt Island" という名称 (英語では「ロゥズベルト」と発音します) は1973年に決まりました。当初建設されたのは中所得者向けの賃貸住宅やコープでしたが、後にそれらの一部は所得制限のない一般向けの賃貸住宅に変わり、続いてコンドミニアム、賃貸住宅、病院の職員や研究員用の住宅もできました。マイケル・ブルームバーグ元市長の時代には、ニューヨークに起業家や情報技術に強い人材を増やすために大学院大学のCornell Tech(コーネル・テック)が誘致され、2017年以降、キャンパスと教職員・学生用の住宅が建設されました。

生活のための一通りの施設やいくらかの商業店舗があります。公立学校 (P.S./I.S. 217. Pre-Kから8年生まで)、チャイルドケア施設 (Bright Horizons, Island Kids)、市のYouth Center、公立図書館、スーパーマーケット、小さい食料品店、クリーニング店、劇場&パフォーマンススクール、ヨガセンター、レストラン、カフェ、美容院、ネイルスパ、病院、郵便局、駐車場、屋内コートのテニスクラブ、公園、屋外スポーツ施設などです。消防署もありますし、巡回する警察官も目にします。

ただし、エリアが小さいこともあって選択肢はかなり限られており、何かの種類が一つしかないこともあります。マンハッタンの北部や、クイーンズやブルックリンの奥などの住宅地でも若干似た状況はあり得ますが、ルーズベルト・アイランドの大きな違いは、他を探すために島から出る必要があることでしょう。

島に唯一のスーパーマーケットはあまり人気がありません。店が今の Foodtown に変わる前も Gristedes の店舗で、鮮度や価格の面で不人気でした。買い物をマンハッタンのスーパーマーケットでする住民が多く、また島内では配達の FreshDirect のトラックを見かけることが多いとも言われていました。


地下鉄駅の周辺では2013年に大きな進展があり、新しく建設された建物の1階に島で初めての Starbucks と、ドラッグストア&コンビニエンスストアのDuane Raede (デュアン・リード)ができました。さらに、レストランが4つオープンしたことが画期的です。ただ、住人の数を勘案しても、お店の選択肢が少ないと言えそうです。ここには観光客が来ないためでもあります。

 交通

ルーズベルト・アイランドにはクイーンズとマンハッタンをつなぐ地下鉄 Fラインが停車し、マンハッタンの63丁目&レキシントン・アベニューまで一駅です。島に駅ができたのはそれほど昔ではない、1989年のことです。

地下鉄が利用できるようになる前からの公共交通機関としては、1976年からルーズベルト・アイランド・トラムウェイと呼ばれる空中トラムが運行しており、マンハッタンの60丁目&ファースト・アベニューまで4分で移動できます。レキシントン・アベニューの地下鉄 456ラインやヨーク・アベニューの Qラインで乗り継ぐと、追加の乗車料がかかりません。トラムは島に地下鉄が開通するまでの一時的な交通手段として導入されたものの、現在も稼働しています。ちなみにこれは公共交通機関としては米国で最初の空中トラムで、2006年にオレゴン州ポートランドに二例目が出来るまで、唯一のものでした。

2017年からはNYCフェリーも利用できます。島の東側に乗り場があり、ロングアイランドシティ経由でマンハッタンやブルックリンに行くことができます。

道路については、島の北3分の1付近から東に伸びるRoosevelt Island Bridgeにより、クイーンズのアストリアに繋がっています。マンハッタンに直接渡れる橋はありません。

島内の移動のためには、赤い無料巡回バスが頻繁に走っているのに加え、アストリアとの間を行き来する市バス (Q102)も島内を一周します。とはいえ、悪天候でない限り島内はどこにでも歩けない距離ではなく、地下鉄の駅から島の一番北の住宅まで歩いて20分、道のりにして1.6kmです。

 住民

住民層は2000年時点で人種においても経済力においても多様と言われましたが、2010年代のある時から、この島からマンハッタンに通う人の人種や年齢層が傍目にも明らかに変化しました。公共交通機関の利用者数も増加しました。

2017年10月4日にNew York Timesに掲載されたルーズベルト・アイランドについての記事から、"The Vibe"という段落を一部引用します:「この島には米国外の出身者が多く、そのいくらかは国連の職員だ。Anne Renteriaによると、この島の食料品店では、彼女が以前住んでいたマンハッタンの食料品店と比べ、ますます多くの海外産の品を目にする。」

比較的最近も、賃貸住宅やコーネル・テックの関係者向けの住宅ができ、それに伴う変化が続いたと思われます。

 住宅

ルーズベルト・アイランドは、マンハッタンから一駅という便利さを備えつつ、マンハッタンより家賃が低いことが魅力です。

島内の建物のうち、賃貸を申込める建物の場所は下の図の①から④にほぼ限られています。


 のエリアには住宅用の建物が9棟ありますが、収入制限なく申込める賃貸ビルは3棟のみです(うち一つは2024年に完成したもの)。その他は病院関係者の専用住宅とコンドミニアムです。この島のコンドミニアムでは購入者自身が住むことが多いためか、賃貸に出される空室はそれほど多くありません。

 のエリアの賃貸ビルはそれなりに古くて安く、許容できる範囲と呼べる品質でしたが、2019年頃に新しい所有者が大幅に内部をリノベートおよびリブランディングしました。

③、④ のエリアは駅からやや遠く見えますが、市バスや無料巡回バスが賃貸ビルのすぐ近くに停車するため、不便さは軽減されています。北の方は、ややアメリカの郊外のような雰囲気がしてきます。



①より南、つまり島の上を横断する橋 (The Ed Koch Queensboro Bridge、別名 The 59th Street Bridge) の南側には、ホテルと、コーネル・テックの建物と、大学関係者向けの住宅があります。島の南端は公園です。

 ゴミ収集車が存在しない ~ 集合住宅と直結した地下ゴミ収集システム

1975年に始めの集合住宅が建設されたのと同時に、各建物から家庭のごみを島内地下に自動収集する大型システムが稼働しました。スウェーデンのEnvacという会社が製造したもので、直径24インチ(61cm)のパイプを通して、強力なタービンによる陰圧でゴミを吸い込みます。稼働当時、アメリカでは他にディズニーワールドにしかこの設備は存在しませんでした。

この設備のお陰で、ルーズベルト・アイランドにはゴミ収集車が走っていません。島内の道路はあまり広くなく、自動車を不要にすることを前提に島の開発が行われたため、この仕組みが必要でした。結果として、マンハッタンのように路上にゴミが出されることがないため、清潔で、ゴミ収集車の夜中の騒音もありません。

 全く静かというわけではない

ルーズベルト・アイランドは交通や人の活動が少ないため比較的静かですが、全く静かという訳ではありません。資材を運ぶ船やバージがイーストリバーを頻繁に往来する際、島の横の川幅がやや狭いせいでそれらは島の近くをゆっくり通り過ぎ、低いエンジン音がしばらく響きます。また、マンハッタンの70丁目付近の東端の道路で救急車や消防車が何台も渋滞することがあり、鳴り続けるサイレンが島まで聞こえます。島が「とても静か」とした説明が一部に見られますので、この点を注記します。




《 参考 》

New York Times. The Chapel of the Good Shepherd内部の写真

Cornell Techが出来た場所には、2014年までGoldwater Hospitalがありました。2013年に最後の患者が転院し、解体を待つだけになったとき、フランス生まれの写真家 Charles Giraudet が許可を得て病院を撮影しました。次のGiraudetのウェブサイトで見ることができます。Goldwater, 1939-2013

untapped new york. Inside Roosevelt Island’s Futuristic Pneumatic Tube Trash System. 2020.

Wired. New York City's Trash-Sucking Island. 2018.

NPR. How New York's Roosevelt Island Sucks Away Summer Trash Stink. 2017.

Urban Omnibus. Fast Trash! 2010.


2025年8月16日 最終更新

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