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マンハッタン住宅売買統計 2022年 第2四半期

マンハッタンの2022年第2四半期の住宅(コンドミニアム及びコープ)売買統計が発表されました。前回に引き続き、 今年起こっている変化に着目してご説明します。2021年までの背景は 2021年第4四半期の解説 をご覧下さい。

2022年7月11日 最終更新

マンハッタンで売買された全住宅の価格(中央値)と売買数

  • 売買数 (棒グラフ&右軸) は前四半期から6.9%増加しました。昨年の第2四半期からは12.2%の増加です。
  • 売買価格の中央値 (折れ線&左軸) は、前四半期から5.0%上昇し、昨年の第2四半期からは13.6%上昇しました。パンデミック直前の2019年第4四半期からの2年半では25%上昇しています。

データを考察する上で重要なことが一つあります。それは、今年の上半期は、昨年までの上半期と違い、売買された住宅のうち新築住宅の割合がかなり高いことです(下の図)。

新築住宅の方が顕著に価格が高いため、この変化はマンハッタンの全住宅の売買価格統計を押し上げる効果がありました。価格が高くても新築が売れた要因には、(A) 中古住宅のリスティング数が需要に対して不足していたことや、(B) 建設途中の新築物件では手付金を払って完成を待ち、引き渡し時に契約となるため、中古よりピークが遅れて到来すること、(C) 空前の株高のうちに現金化した人は資金力に影響がなかった、などがありそうです。

新築住宅と中古住宅を分けて集計すると

折れ線(左軸)が価格の中央値、棒グラフ(右軸)が販売数を表します。緑が新築、青が中古です。新築住宅は数が少ないため集計時期によって価格にばらつきがありますが、中古住宅価格は滑らかな変化を示します。

  • 前四半期から新築住宅価格の中央値は 12.3% 上昇し、中古住宅価格の中央値は5.0%上昇しました。住宅全体の価格の中央値も 5.0% の上昇となっているため、一見直感に反するかもしれませんが、取引数の82.1%を占める中古住宅の価格の中央値付近で多数の売買があったなら、新築売買数が26.7%程度増えても中古住宅価格の中央値が全体と同じ程度にしか変わらなかったというこの結果はあり得ます。
  • 昨年の第2四半期からの価格上昇率は、新築住宅では5.3%、中古住宅でもほぼ同程度の5.1%でした。全体の価格の中央値が13.6%も上昇したのは、新築住宅販売が約2倍に増えた (その一方で中古売買数は昨年第2四半期までにいち早く増加していたため、それからは2.3%しか増えなかった) 要因がかなり大きいと理解できます。

2022年第3四半期の見通し

成約件数は3月をピークに次第に減少していることが判明しているため、完了した取引を対象とする本統計はこの第2四半期がピークだと分かります。特に、6月の成約数は5月から約26%減少しました。

住宅ローンの金利が6月末まで上がり続けたことも、第3四半期の売買数に影響するでしょう。第2四半期に行われた取引の52%が全額現金によるもので、それは過去の平均より4.2ポイント高いことは特筆すべきですが、それでも金利による下向きの圧力は免れません。

6月までの成約データに、価格の下落はまだあまり見られません。元々マンハッタンは価格が落ちにくいところでもあります。しかし、これからは多少価格が下がる可能性があります。既に、一部の売れにくそうな投資物件でリスティング価格から若干値下げされている例が見られます。


図表は当チームが作成。元データは Miller Samuel 社によります。


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