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その不動産会社は本当にあなたの代理人ですか?NYの手数料無料賃貸に手数料を上乗せする日本式「両手仲介」

日本で一般的な「両手仲介」「両手取引」という不動産取引慣習は、米国ではお客様への開示がない限り、法律で禁止されていることをご存知ですか。お使いになる不動産ブローカーが、本当にお客様の利益を代表する代理人かどうか確認する方法があります。


米国の法律の下では、不動産ブローカーが同一取引の売り手と買い手、または貸し手と借り手の両者を仲介して手数料を受け取ること(”Dual Agency”)は、顧客にその旨を開示しない限り、禁止されています。そのような仲介を行う場合、不動産ブローカーは一方のお客様の利益を最大化することが不可能であり、かつ、「情報の非対称性」に乗じて、お客様の利益を犠牲にして自身の利益を最大化するという利益相反取引を選択することが容易なためです。

「両手仲介」にどういった弊害があるかは、それが禁止されていない日本の事例を見ると良くわかります。(註:日本でも双方の代理人になることは禁止されているものの、不動産において双方を「仲介」「媒介」して手数料を取ることは、民法上の代理とは区別され、顧客に事実を開示する必要もなく合法とされています)。例えば、不動産会社Aが、家主に依頼されてある住宅を売却する契約を結んだとします。売却が成功すると、Aは報酬として売却価格の3%を家主から受け取ることが決まっています。通常ですと、不動産会社Aは、家主の代理人として、より高値で物件を売却することが本来の役目ですので、不動産会社のネットワークを通して広く広告します。別の不動産会社Bを通して買い手が現れ、5,000万円で売買が成立しますと、不動産会社Aは家主からその3%(150万円)を受け取り、不動産会社Bは買い手から仲介手数料3%を受け取ります。しかし不動産会社Aは、自身の顧客に当該物件を売却すれば、もっと高い手数料収入を得ることが可能です。これが「両手仲介」「両手取引」です。この場合、Aは限られた自社のネットワークから買い手を探しますので、必ずしも希望価格で売却できるとは限りません。仮に希望価格より10%低い4,500万円でしか売却できなかったとしても、不動産会社Aは、売り手と買い手の双方から合計 4,500 x 3% x 2 = 270万円を得られ、市場の買い手に5,000万円で売却する場合の手数料 150万円と比べ、80%も高い手数料を得られます。売り手の利益の最大化は追及されず、代わりに不動産会社Aが自身の利益を追求しています。

日本では不動産会社が行っている取引のかなりの割合を、このような「両手仲介」が占めています。比率は、例えばDiamond Onlineに掲載されたこのレポートをご覧下さい。多数の不動産会社において、両手仲介の割合が50%を超えています。diamond.jp/articles/-/148998

両手仲介は、賃貸市場でも起こります。日本では、法律で仲介手数料が家賃の1か月分と定められている関係上、家主は仲介手数料という名目ではプロモーションしませんが、代わりに成約時に「広告費」「奨励金」といった名目で不動産会社に金銭を支払うことで、早く借り手を見つけようとする場合があります。そうすると、不動産会社は、そのようなプロモーションを行っているアパートを優先的に借り手に紹介して、むしろ家主から広告費を得られないアパートを紹介しないという動機付けが生まれます。借り手は、不動産会社が物件を探し仲介する専門能力に対して手数料を払っているにも関わらず、逆に不動産会社だけが知り得る業界知識の壁に阻まれ、希望する条件に最も適した物件を紹介してもらえないという不利益を被るのです。

同じようなことが、借り手にさらに不利な条件で起こっているのが、日系不動産会社が仲介するニューヨークの賃貸市場です。トップページ《 仲介料不要の賃貸物件 》でご説明しました通り、日系不動産会社は家主が借り手の代わりに支払う「仲介手数料」を受け取りながらも、どの家主が仲介手数料を負担するかを借り手に開示せず、また、ある会社はそれを「仲介手数料でなく奨励金」だという正しくない説明まで行って、借り手から仲介手数料を二重取りしています。日本との違いは、ニューヨークの家主は借り手に代わって「仲介手数料」を不動産会社に払うにも拘わらず、日系不動産会社は、お客様が本来払わなくてよい仲介手数料(年間家賃の12%-15%)を請求している点です。繰り返しますが、十分な情報開示をせずに行うこのような取引は、米国では違法です。(各州で1990年代に法制化されました。)

ニューヨークで営業する大手を筆頭とする日系不動産会社が、何故このような、違法な利益相反行為をするのかと考えますと、大きな要因は言語・情報障壁を悪用するモラルのなさと言えますが、日本で「両手仲介」に慣れ過ぎていて、同じことをアメリカで行うことに躊躇がないこともあるのかもしれません。(余談ですが、20年以上前に両手仲介が禁止されて以降も日本人相手に現在まで続いているわけですが、このコンプライアンス意識の低さは、2016年秋からAirbnbなど30日未満の短期賃貸がニューヨークで禁止されてなお、日本人向けにそれを続けていることと通じるものがあります。)

では、お客様がこのような不利益を受けないようにするために、何か対処法はあるでしょうか? 一番の方法は、信頼できる不動産会社、特に現状では米系不動産会社をお使いになることですが、他にも若干方法があります。

その1.お使いになる不動産エージェントが借り手だけの代理人なのか、家主と借り手双方の代理人(”Dual Agent”)なのかを確認します。実は、ニューヨーク州の不動産エージェントには、下のフォームを用いてお客様に誰の代理人なのかを説明する法律上の義務があり、私たちも必ずお客様にご説明してサインをお願いしています。(フォームのダウンロードはこちらから。)

New York State Disclosure Form for Landlord and Tenant


その2.ご希望の賃貸物件の家主が仲介手数料を支払うかどうか、不動産会社にお尋ねください。もっと直接には、その物件の管理会社(Leasing Office)にお尋ねになっても結構です。物件によって、家主が一年中どの時期でも仲介手数料を肩代わりしたり、賃貸需要が高い時期(特に5月から夏までの間)を除いて肩代わりしたり、全く払わなかったりと様々ですが、中・高級物件ほど家主が手数料を払う可能性が高くなります。

お客様の大切なご契約ですから、疑問があれば遠慮せずにお尋ねになるべきです。

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