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そのサービスアパートメントは合法ですか? パンデミック後は特に機会逸失の要因に

ニューヨークの複数の日系不動産仲介会社は、30日未満の利用が可能という違法な "サービスアパートメント"(家具付き短期アパート)を日本企業や政府の駐在員に斡旋しています。その結果、赴任時にそういったアパートで仮住まいすることが当然だと思い込むご駐在の方はそれなりに多いと思われます。しかし契約形態が違法だとご存じないことが多数です。この手法は、日系仲介会社が法人需要を取り込むために数十年前に始めたものですが、現代ではその違法性不経済性の点で、勧められなくなりました。安全衛生品質上の問題もあります。企業は特に、法へのコンプライアンスの観点から避けるべき選択です。

当チームのお客様の殆どは、渡米前に賃貸契約を終わらせるか、渡米後しばらくホテルに滞在して物件をお決めになりますが、30日以上の家具付き短期賃貸住宅をご希望の方に、高品質コーポレートハウジングの専門企業を無料でご紹介しています。契約期間のフレキシビリティを重視する方には、キッチン付きのホテルという選択もあります。詳しくは こちらをご覧下さい。

2025年2月20日 最終更新

違法

  • 30日未満の賃貸契約は、ニューヨーク州やニューヨーク市の法律で禁止されています。1か月未満の賃貸契約の他、1か月以上の契約をしても早期退去して日割りの払戻しを受ける場合が該当します
  • 30日未満の契約が許されるのは、土地の利用区分が「商業地区」に指定された本当のホテルでの宿泊のみです。「アパートメントホテル」「バケーションレンタル」そして Airbnb などの民泊は、単に住宅の違法な商業利用です。市は予算を大幅に増やして違法な短期賃貸を取り締まっており、違反が見つかるとその状態の即時解消を、入居者には即時退去を命じます
  • 大手賃貸住宅やコンドミニアムは管理会社それぞれのルールによっても民泊を禁じています。隣人の通報で即退去させられるリスクもあります

期間の不経済

  • ニューヨークは空室率が低く、良い長期賃貸物件にすぐに借り手がつくため、ご赴任前から探しつつ、到着後はホテルに1週間程度ご滞在になることが合理的かつ経済的です。ある週末にご覧になった賃貸住宅は、次の週にはマーケットから消えています。数週間かけて物件をご覧になっても、それらを同時に比較・検討することは不可能です。従って、サービスアパートに1か月滞在しても、始めの1週間で探す以上の意義はなく、ある時点で見つかるものに決める決断力が圧倒的に重要です。私たち不動産エージェントはそのための判断材料をお客様に提供し支援します
  • ご帰任がご赴任とほぼ同時期、つまりちょうど年単位の異動になる方がいらっしゃいます。ニューヨークの賃貸契約期間は原則1年か2年単位で、解約には違約金がかかることが普通ですので、赴任時にサービスアパートを1か月(またはそれ以上)お使いになると、利用した期間と同じ月数が帰国前に余り、無駄に家賃を払うことになります

さらに・・・

機会逸失と長期化

  • 日本から多数の方がご赴任になる時期には、赴任者同士で空室の取り合い競争が起きます。通常、前月(例えば3月下旬)に前の住人が退去したユニットは、清掃やメンテナンスを経て、翌月(同じ例では4月)の第1週あたりに入居可としてマーケットに出てきがちです。最近では、前の住人が退去する前から空室予定情報を出して借り手を募集することが増えました。それらを逃すと、同じ建物でその月に入居可の空室は翌月までなかなか出てきません。サービスアパートに滞在して決断を遅らせるほど良い物件が減ります
  • パンデミックからしばらく経つと、郊外よりNYCの利便性の良い住宅の人気が高まりました。その上、消費者物価に追随した家賃の高騰により、引越さず契約を更新する人が大幅に増えています。また、金利が高いため、住宅を購入して賃貸住宅から退去する人が減っています。こういった動向を受けて、家主は空室になる予定の賃貸住宅を2か月以上前から広告することが増え、即入居可を謳う物件広告が減りました。このため、閑散期でない限り、渡米前から物件探しを始め、申込んだり、契約まで行うのがお勧めです

公立学校への転入が遅れる

  • ニューヨーク市の公立学校への転入手続きにおいては、居住の実態がある現住所の証明を2種類提出する必要があります。いわゆるサービスアパートメントに住むとその証明を用意できないことが普通であるため、その間は事実上、転入手続きを開始できません


日系不動産会社がサービスアパートメントを強く勧めてきた理由は、実態が良く分からなくてもパッケージ化されたサービスを頼りたくなるお客様の心理(日本人に多い傾向と思われます)、および「すぐに良い物件が見つからないかもしれない」という不安を利用して集客することです。真にお客様本意のソリューションだからではありません。次のような内部事情もあります。

サービスアパートを勧める不動産会社の都合

  • 他社が斡旋する「サービスアパートメント」は、主に、個人投資家がその不動産会社から購入した住宅のサブリース(転貸)です。つまり、個人投資家に購入を勧めた住宅を駐在員需要の取り込みに利用するビジネスです
  • 特定の月に集中する赴任者に一斉に対応できるほど不動産会社に十分な人員がいないため、赴任者に長くサービスアパートに滞在してもらい、物件への案内時期を分散させたい思惑があります

サービスアパートは減少している

  • パンデミック後は投資物件を売却したり長期賃貸に転換する投資家が増えたため、日系不動産会社が管理するサービスアパートも減っており、サービスアパートを借りる約束を日系不動産会社に突然キャンセルされて困ったというお客さまが時々いらっしゃいます。ついでに言えば、キャンセルを起こす本質は数が足りないことだけでなく、その不動産会社が約束を守らないことです。日系他社がキャンセルしたアパートは、予算が高く仲介料を多く請求できるお得意様企業の駐在員に割り振られたのでしょう
  • 投資物件や賃貸専用物件それぞれで賃貸時の最低期間が決まっていますが、最近は最低期間を長く設定する物件が増えています。これは、1か月や3か月などの短い期間の賃貸を許容したことで、それに紛れて Airbnb などの違法短期賃貸に使われたりもし、風紀を含む住環境が悪化したことへの対応です


家具代や光熱費や仲介料を入れ込んだパッケージ化商品で、かつ短期利用可という特殊さがあるため(長期賃貸の解約料が織り込まれているのに似ています)、それがコストを見えにくくしています。

家賃が非常に割高

  • 短期賃貸物件は、年間契約する賃貸物件と比べて著しく家賃が高いことが普通です。年に何度も空室期間が発生する上に、清掃やメンテナンスの必要も生じ、また貸主がケーブルインターネットに常時加入していることも多いためです
  • 例えば、マンハッタンで月の家賃が$4,000(税別)以下のサービスアパートであれば、通常賃貸するなら$3,000未満の住宅の品質と考えられます。$5,000台(税別)でようやく安いホテル並みになりますが、もしそのアパートが12か月家具なしで借りられるのであれば、駐在員の方が普通はお選びにならない品質に過ぎません。短期賃貸は、低品質のものをそれだけ高くしないと家主にとって割に合いません
  • 普通のホテルに近い品質の短期アパートを1-2か月だけお使いになるのでしたら、標準的には月$6,000(税別)を超えます
  • 6か月未満の短期賃貸には、ホテルと同様の宿泊税がかかります。それも短期物件を割高にする要因の一つです。

逆に言えば、通常の賃貸物件より少し高い程度の短期サービスアパートに普通の品質は期待できません。

安全・衛生・品質上の問題

  • 住人が短期で入れ替わるため、ドアマンが住人を把握できておらず、住人でない不特定多数の人の出入りが容易です。サービスアパートが多い賃貸ビルで管理体制が弱いところでは、部外者の押入り、荷物の窃盗、生命の危険となる事件が起こっています。また、住民の質が低下し、騒音や共用エリアでのゴミの散乱も報告されています
  • 米系のコーポレートハウジング専門企業であれば、ドアマン常駐の高品質賃貸物件と契約してその一部を使っており、内装も洗練されています。その他の会社の管理物件は非常に古いことが多く、水回りに問題があったり、入居後すぐに害虫が出た話を聞きます
    • あるサービスアパートメントのQ&Aページに「バスタブの排水口がつまり気味です。どうしたらいいですか?」と掲載されていました。グーグルでのレビューにはこの苦情が今もあります
    • 備え付けの家具は安い大量生産品です。炊飯器(数十ドルで買えるような安物からあります)のような日本人向けの設備を加えたところで、根本的な品質と快適さは覆せません
    • 似た品質の家具付き短期賃貸物件が、繁忙期なら Studio で $3,000台後半で見つかります (での投稿
  • 1ベッドルームと謳われていても、Studioに仕切りを入れて、リビングルームとベッドルームに分けただけの物件があります。ミッドタウンイーストの、セカンドアベニュー付近のある賃貸ビルがその例です。部屋の仕切りが通常の壁でなく引き戸になっている、増設されたベッドルームに収納がない(または居住スペースを狭める形で収納を設置)、リビングルームに窓がない、といったものです

日系不動産会社がお客様に仲介することがある、ある米系の短期家具付きアパートメントを、弊社を通して長期賃貸用住宅をご契約の方に限り、ご希望でしたら無料でご紹介します。広さにより $5,000から$6,000(税別)程度。渡米後すぐに物件探しの時間が十分に取れなさそうな方には、一種の保険となります。


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