物件評価

アメリカのコンドミニアム 間取りの研究(1)

ニューヨークのコンドミニアム(日本で言う分譲マンション)を例に取り、日本では見られない間取りの特徴や、その物件の魅力や難点を解説します。使い勝手や貸しやすさはどうでしょう。価格に釣り合った間取り・内装でしょうか。最後に、投資に向いた物件かを検討します。

「間取り図」は英語で「フロアプラン」や「フロアレイアウト」と言います。コンドミニアムをご購入になる際、ご自宅であれば毎日の生活のし易さ、投資であれば貸し易さと家賃に大きく影響する大切なポイントです。同じ広さ(SQFT; ft²)でもフロアプランにより、実際よりも広々と感じたり、窮屈に感じたりもします。

今回は Upper East Side の南の一等地にある、最近売買された新築高級コンドミニアムのフロアプランをご覧下さい。約1,200 ft²(115 m²、プライベート・テラスを含まない、居住空間だけの床面積)と、稀に見る広さの 1ベッドルーム 1.5バスルーム構成のユニットです。但し、$2,500,000 という購入価格は、広さやロケーションの利点があるとはいえ、下でご説明する難点を考慮するとバランスが悪いと感じられます。


■ 魅力ある点
玄関口のクローゼット

玄関を入って正面のクローゼットは、コートや傘、靴を置くのに便利です。

プライベート・テラス

広めのテラスは、アウトドア用のテーブル・椅子やソファー等を置いてリラックスするスペースとして使えます。(最近の高層建築には各戸にバルコニーがつかないことが殆どです。)

パウダールーム

玄関左手にパウダールーム(トイレ;ハーフバスルームとも呼ぶ)があり、お客様用として使えます。

ダブルシンク

マスターバスルームにはダブルシンク(二つ横に並んだ洗面台)が備わっています。

■ 難点
室内洗濯機・乾燥機の位置

室内洗濯機・乾燥機(水色で表示した W/D; Washer & Dryer)には、何故かパウダールームからしかアクセスできません。不便なだけでなく、洗濯物をお手洗いを経由して取り出す点に、違和感をお感じになるかもしれません。

マスター・バスルームの位置

マスター・バスルームには、ベッドルームだけでなくクローゼットを通り抜けないとアクセスできない点が、致命的に使い勝手が悪いです。普通の En Suite バスルームであれば、大きめの扉で直接バスルームにアクセスしますが、この物件はクローゼットを通り抜ける狭い作りなのが不便です。さらに、通路を確保する必要があるため、クローゼットとしての機能は壁に沿った限られたものになります。もしかすると、バスルームの音がベッドルームに漏れにくいという利点はあるかもしれませんが、そのせいで主要なクローゼットスペースの利便性が大幅に下がっているのは、総合的に大幅な減点です。湿気が発生するこの場所が、狭いクローゼットの隣り合わせであることも、常識的に考えてデメリットや不快さしか見出せません。

クローゼットを通り抜けない普通の En Suite バスルームが採用されていたとしても、万一来客にシャワーを使ってもらいたくなった時に、プライベートスペースを経由しなければアクセスできないのは不都合です。

En Suite バスルームの根底にある考えは、「ゲストが使えるパウダールームが別にあるのだから、フル・バスルームはお住まいになる方だけのものとして、ベッドルームから繋がっていて良いだろう、その方が便利だろう」というものです。つまり、高級な 1ベッドルーム(1LDK相当)のコンドミニアムでもパウダールームがない住宅、そして日本の分譲マンションには、あまり見られない形です。

クローゼットの狭さ

ベッドルームの横のメイン・クローゼットが小さいです。ユニットは 1,200 ft² もあるのですから、もっと広く、そしてウォークインクローゼットが欲しいところです。

■ 好みが分かれる / 対処が必要な点
ギャレーキッチン

壁沿いの台所をギャレーキッチンと呼びます。室内が狭いユニットには多いのですが、好まない方も結構いらっしゃいます。

それなりの広さの高級コンドミニアムであれば、イタリアンマーブル(しかも良い産地の高級品)やクォーツのカウンタートップを備えた大きめのアイランドが設置されていることが多く、料理の盛り付けをしたり、食事をしたり、ラップトップパソコンを置いたりするスペースになります。とりわけ近年は、大きなカウンターとシンクがあって、リビングルームに目を配りながら料理や洗い物ができるアイランドの人気が高まっています。

ギャレーキッチンの使い勝手を良くするためには、リビングスペースとの間にカウンターの役目を果たす家具を置くか、キッチンに近いところにテーブルを置く必要があるでしょう。一方でディベロパーは、高価なアイランドを設置しないことでそれなりに大きな建設費用の節約になったはずです。このコンドミニアムの販売価格なら、アイランドがあって然るべきではないでしょうか。

バスタブがない

バスタブがなく、シャワールームがあります。バスタブを使わない買主が住むならもちろん問題ありませんが、高級な投資物件として拘りの多い借り手を見つけたいなら、バスタブがある方がバランスが取れています。むしろ、ニューヨークの高級コンドミニアムでは、1ベッドや Studio であっても、バスタブとシャワールームの両方を備えているのが普通です。この物件ほど高価なのに両方が備わっていないのは、価格に釣り合っていない感があります。


このコンドミニアムは投資家が購入後、すぐに賃貸マーケットに出されました。気になるお家賃は、月$7,995 です。何日で借り手がつくのでしょうか。約3週間経った現在、まだ借り手はついていません。

この物件を投資物件として貸し出し、家賃収入を上げるのは難易度が高いでしょう。理由があります。

  • 1ベッドルームのユニットとしては破格の広さでテラスも付くという、いわば「規格外」です。1ベッドルームのアパートを探す人が、この広さと家賃を想定することはまずありません。特別な物件を探している数少ない人のレーダーにしか入りません。
  • 規格外である割には、内容と価格のバランスが取れていない要素が多い、そしてコストが掛けられていないと感じます。マスターバスルームの配置、収納の少なさ、バスタブがないこと、キッチンにアイランドがないことが特にそうです。特別な物件を探す人がどの程度それらを不便だと感じず、代わりに立地など別の要素を高く評価するかにかかっています。
  • 規格外のこの物件を求める人の少なさと、家賃が高いことから、テナントが出るたびに、次のテナントが見つかるまでに比較的長い期間を要すると考えられます。この物件の税金とコモンチャージの合計は、毎月約 $3,500 です。仮に、1年のうち 1か月半の空室ができれば $5,250 の持ち出しになります。これに家賃の逸失利益も勘案すると、年間で約 $17,240 の損失となります。なかなか大きな振れ幅です。

投資家がコンドミニアムを購入するにあたり、非常に高価な新築物件を手に入れることによる自己満足を排し、収益を上げることを目的とするならば、もっと貸し出しやすいコンドミニアムを選ぶのがより良い選択です。例えば、半額程度のコンドミニアムを2つ購入することです。年間の収入が増えそうなだけでなく、副次的に空室リスクを二つに分散させることもでき、収入が高めで安定します。一つの物件しか所有しないと、年によって空室期間の長さに当たり外れが大きく出来てしまい、運次第の収益となります。

このような(ニューヨークのマーケット内での)一点豪華的な投資や、減価償却による節税を重視するあまりか家賃収入への想定が甘いのは、プロの投資方法ではありません。また、良いバイヤーズ・エージェントなら、クライアントにそういったアドバイスをするでしょう。


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