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物件評価

アメリカのコンドミニアム 間取りの研究(2)

住宅の間取りを見るシリーズ第二回では、五番街の高級コンドミニアムを取り上げます。賃貸専用住宅の多くが備えていない特徴があるのですが、購入用の住宅探しに慣れた人でないとそれに気付きにくいかもしれません。

800 ft² を少し上回る広さ(約 75 m²)で、バスルームの他にパウダールームを備えた1ベッドルーム住宅です。1ベッド & 1バスの住宅であれば 800 ft² はマンハッタンでは標準よりやや広い方かもしれませんが、このように1.5バスで高級なコンドミニアムなら、もっと広い例も多いようです。

■ 魅力ある点
入口から見て、リビングルームの大半やキッチンが隠れている

入口が部屋の角にあり、そこから 3.7m のフォワイエ(Foyer)と呼ばれる短い通路を経てリビングルームに向かいます。このお陰で、リビングルームの手前がちょっとした緩衝空間になる上、入口からはリビングルームの三分の一程度しか視界に入りません。水平な間取り図からは想像しにくいかもしれませんが、その効果は下の写真で一目瞭然です。

キッチンが全く見えないのも良い点です。クローズドなキッチンを採用した住宅と違い、オープンキッチンを採用した住宅では、リビングルームを隠さないとキッチンも見えてしまいます。


数歩進んでリビングルームに入ると、下のように視界が広がります。キッチンが奥にあるため、来客を通した場合でもあまり気を遣わなくて済みそうです。

賃貸専用物件では、ドアマンがいる比較的高級なものであっても、入ってすぐのところにオープンキッチンがあり、リビングルームが丸見えの間取りが多く見られます。それらは一見広く開放的に感じられ、景色の効果も加わってお客様に強い好印象を与えがちです。しかし、それは空間レイアウトや動線の工夫が少なかったり、収納が少ないことによるところが大きいので、ドアを開けた際の第一印象に惑わされない、冷静な判断が必要です。

エアコンディショナーが窓際になく、天井に埋め込まれている

高級コンドミニアムでは当然のことですが、エアコンディショナーが天井付近に埋め込まれており、通風孔も上部にあるため、床のスペースを 100% 有効に使えます。多くの賃貸専用住宅では、機器が窓際の床上に設置されています。

■ 好みが分かれる点
マスターバスルームが広い、または広すぎる

マスターバスルームは、図面から分かるようにとても広く、横に 5.2m もあります。横長のダブルシンクはお二人で使われるなら長所と言えるので良いのですが、右端のトイレと真ん中のシンクの間が中途半端に空いています(下の写真の左手前)。物を置くには使いづらく不十分なスペースです。同じ建物の他の1ベッドユニットには、この余分なスペースがないものがありますので、この点は "規格外" と言えます("規格外" が不利になる理由は 《 間取りの研究(1)》 をご参照)。

ここまで広くするなら、シャワールームを設置することもできたのではないでしょうか。

ベッドルームから見たバスルーム、バスルームから見たベッドルームは、下の通りです。ベッドルームは、作り付けのクローゼットを設けた結果、小さめです。もしバスルームや(後述の)洗濯機・乾燥機置き場がもう少し小さければ、代わりにベッドルームを大きくしたり収納を広げることができたでしょう。広いバスルームは、あれば素晴らしいのですが、800 ft² の住宅には大き過ぎる気がします。

鮮やかな茶色の内装

現代では、このように明るい色のオークを使った内装を滅多に見なくなりました。家具と色を合わせにくいですし、今主流のインテリアデザインからは外れています。白か淡いグレーにすべきでした。売却のしやすさを考えると、現代的デザインの方が望ましいでしょう。

■ 難点
洗濯機・乾燥機が中途半端に広い場所にある

洗濯機・乾燥機(図中の 'W/D')が、広く奥行きがあるスペースに設置されていますが、洗濯機・乾燥機を置くには少し広すぎます。また、洗濯機・乾燥機からの湿気が籠るので、衣類の収納には向かないでしょうし、他にも一緒に置きたくない持ち物があることでしょう。このスペースはもう少し狭くし、隣のクローゼットを広げた方がよかったのではないでしょうか。

この物件の主な良さも問題点も、賃貸専用住宅には見られない空間設計に起因しています。入口からリビングルームが見渡せないレイアウトや、まずまずの広さの収納、贅沢な広さのバスルームは、賃貸専用住宅にはあまり見られないものです。そのために実質的な居住空間がやや狭いことを、場所や価格とのバランスに照らして、どのように評価するかがポイントです。

個人的な見解ですが、投資用にこのコンドミニアムを購入されるなら、空室率を下げる目的上、良い立地でも家賃が高くなりすぎないことが重要ですので、高級ながらやや狭いこの作りも悪くはないと思います。

しかし、ご自身で長くお住まいになる場合は、もう少し快適性と、実質居住面積当たりの価格に気を配られる方が妥当ではないでしょうか。フォワイエがあることは大きな長所ですし、そのせいで広さを見た目の感覚で誤って判断されるべきではないのですが、800 ft² のコンドミニアムをご自身の住居としてお使いになるなら、この広さのバスルームと洗濯機・乾燥機置き場は必要ないだろうと考えます。


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