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パンデミック後のNY賃貸物件探しに激変: 入居1-2か月前から広告される物件も有力選択肢に

2021年7月25日8月15日 付けコラムでは、ニューヨークシティで人気が高い賃貸物件で空室が激減したことを詳しくご説明しましたが、それにより貸主の行動に変化が現れています。それに伴い、賃貸住宅を探すのに最適な方法が、これまでの常識から変わりました。

即入居可の物件が枯渇、貸主は入居可能日より1-2か月早く物件を広告

2021年7月から8月にかけて、賃貸市場は圧倒的に借り手過多であり、時間が経つにつれ空室が減少する一方でした。滞留していた空室は全て借りられてしまい、毎月出てくる空室も需要に対して全く足りませんでした。9月になってもその状況はあまり変わっておらず、ご希望の物件を内覧する間もなく他の申込みが入ってしまうケースが少なくありません。

この状況下で、貸主(賃貸会社)が空室を広告するタイミングが大きく変化しています。

パンデミック前:「即入居」物件が中心

従来のニューヨークシティでは、賃貸物件に常に高い需要がありながらも、毎月一定数出る空室数と均衡が取れていたため、貸主は空室が出る直前、または空室のクリーニングが終ってから、「即入居可」(Immediately Available)として広告していました。数日以内に借り手が見つかっていたため、入居準備ができておらず満足に内覧も出来ない物件をわざわざ広告する必要がありませんでした。

2021年8月以降:「入居可能日は1-2か月先」

2021年8月ごろから、「即入居可」の高品質物件を見つけるのが困難になった代わりに、1-2か月以上先に入居可能になる物件を広告する賃貸会社が増えてきました。理由は、潜在顧客を逃したくない、また、他の賃貸会社に需要を先取りされたくない、といったところだと考えられます。従来は、早期に次の借り手を募集することは、入居者がいるうちに内覧を許すことを意味したため、一流の賃貸会社はそのようなことをしませんでした。

また、パンデミック以降、内覧はバーチャル化が進み、実際の部屋を見ずに契約する人が増えたことが影響しています。バーチャル化の最初の目的は人同士の接触を断つことでしたが、用途が拡大し、まだ入居者が住んでいて現地での内覧が難しい物件に関しても、予め撮影した写真、動画、3Dバーチャル空間を見せるようになったのです。

借主は渡米前に賃貸住宅にお申し込み

このニューノーマルの状況下で、お客様がサービスアパートメントに一旦滞在し、それから長期契約する物件を探し始めるとどうなるでしょう。その答えは、某日系不動産会社が最近フリーペーパーに書いています。長期契約がそこから2か月ほど先になる事例が多発しているそうです。当然です。それにしても狭いサービスアパートに2か月の仮住まいとは、何のメリットがあるのか分からなくなります。

2021年7月から9月の間に渡米された当チームのお客様の大半は、渡米前に物件をお決めになりました。そうしなかった方も、それは早く決められる目処があってのことであり、実際に渡米から数日のうちにご内覧・お申込され、10日から 3週間のうちにご入居になりました。

サービスアパートメントは苦境で減少

サービスアパートメントを日本人駐在員に斡旋してきた日系不動産会社が、その用途で管理する物件を減らした兆候があります。例えば、某社はマーケットに出さず短期サービスアパートとして使ってきたヘルズキッチンの自己所有物件の半分について、2020年末から賃貸市場で順次公開して借り手を募集し、1年以上の賃貸に転換しました。彼らは、日本人投資家から買い戻したコンドミニアムやマーケットレートで借り上げた賃貸住宅を(多くは違法な1か月未満の契約で)「サービスアパート」として提供していましたが、パンデミックによりそれらが長期空室になり、痛手を負いました。在庫はリスクなのです。

サービスアパートメントが減った上、サービスアパートメントに入った人が次の物件が見つからず滞在を延長しているなら、その帰結は一つ。サービスアパートメントを提供してもらえるのは、日系不動産会社の最上位の顧客だけとなります。

2022年4月追記: 当チームにご依頼頂いたお客様の中には、「日系他社に申し込み済みだったサービスアパートを一方的にキャンセルされた」という方々がいらっしゃいました。サービスアパートの数を超える赴任者の依頼があり、後からご依頼になった特定企業のお客様を優先したのだと思われます。

2022年6月17日 最終更新

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