NY不動産市場

2018年9月 住宅価格指数がNYで半年ぶりに上昇。需給バランスも回復し、購入の好機か(データ有)

2018年9月のケース=シラー住宅価格指数が発表されました。米国主要20都市における季節調整後の同指数は、前月比0.33%増でした。ニューヨークシティでは前月比0.29%増で、今年3月以来初めて上昇に転じました。9月までの1年間の上昇率は前年同期と比べて依然小さいながら、低迷は4月から8月までの5か月間に集中しています。2017年から顕著となっていた住宅市況の過熱が一服しつつ、今後、より多くの売り手が価格を野心的な水準から改めることで、乖離していた需給のマッチングが回復し、また長期金利が今のように11月より低く推移するなら、住宅価格はこれから緩やかに復調する可能性が考えられます。つまり、現在は住宅購入に適したエントリーポイントになっていると言えるかもしれません。一方で、2017年中のような過熱は当面考えられないため、売却をお考えの方は、資産の回転効率とリスク回避を重視した出口戦略がご検討に値すると思われます

// 注:最新のケース=シラー住宅価格指数は「投資・売買」に移動しました //


9月までの1年間の変化を振り返ると、ニューヨークシティにおいては前年同期比で2.34ポイント小さい2.65%の増加(季節調整後)に止まりました。これは米国主要20都市の1.09ポイント減と比べて大きな鈍化ですが、ニューヨークシティでは住宅価格が他の都市より高く、2018年の夏から秋にかけて上昇した長期金利に対する感応度が高かったためだと考えられます。また、中国人富裕層による米国不動産へのクロスボーダー投資が大幅な売却超過(7-9月の四半期で8億2千万ドル)に転じたことも影響したと考えられます。

下に、同住宅価格指数の前年同月比の変化を、2017年6月時点に遡って四半期ごとに確認します。




ポイント

  • 2017年中頃から2018年初めまで、ニューヨーク及び米国主要20都市の住宅価格は、ここ数年の中でも特に高い上昇率を示していた。
  • ニューヨークシティでは2018年3月までに、主要20都市では6月にまでに、住宅価格の前年比上昇率がピークを迎え、以降の伸びは緩慢に変化した。
  • ニューヨークシティの2018年6月の前年比上昇率は、2016年から2017年前半の上昇率程度に下がった。2018年9月には前年比2.6%と低成長ぶりが明らかになった。

次に、低成長に陥った2017年9月から2018年9月までの一年間を、さらに短い期間に区切って変化を確認します。2018年9月までの直近12か月、9か月、6か月、3か月、2か月、1か月という順です。1年より短い期間を観察するため、季節調整後の指数を用います。成長率は年率換算しない、その期間ごとの率であることにご注意ください。(例えば、直近6か月の成長率が、直近一年の率の半分であれば、成長率に変化がないことを意味します。)




ポイント

  • ニューヨークシティでは、直近6か月の増加率がマイナスに転じた。これは、2018年4月から8月の各月の増加率が連続して前月を下回ったため。各月の下落率は6月から徐々に縮小し、9月には0.29%上昇したことにより、直近3か月から、2か月、1か月と短く区切るほど、上昇率が高まった。
  • 主要20都市では、指数が下落したのは2018年4月のみだが、その後8月までの指数上昇率は非常に低かった。9月単月では0.33%と改善した。

9月のケース=シラー住宅価格指数の上昇は、今後の推移を占うにはまだ弱いかもしれません。また、このコラムを執筆している12月現在から振り返ると、10月中旬から11月にかけては、米国の金利政策や米中関税報復合戦により幅広い金融市場が乱高下しましたので、不動産投資環境も相応の影響を受けた可能性があります。しかしながら、2018年秋は大きなハリケーン被害がなく、また12月に入ると金利も関税政策も一定の落ち着きを取り戻したことにより、仮に10月・11月に同指数が低下していたとしても、12月以降に再度上昇傾向に戻る可能性が相応に考えられます。

米国の景気についての見通しは、「リセッションに入るとはとても考えられない」とする金融機関エコノミストもいれば、「2019年にリセッション入りする確率が若干高まって30%程度」とするPIMCOの見解も存在するなど、様々ですが、仮に景気が後退期に入るとしても、その頃には金利引き上げ政策が転換されると考えられ、景気後退の程度が大きくない限り、それが不動産価格の下落圧力を相殺する可能性があります。

また、強気な売値がつけられていた住宅(特に中古住宅)が次々に現実的な値付けに戻されつつあり、一方で、市場の不安定さのせいで多くの不動産購入者が慎重姿勢を保っている現在は、住宅購入の良いエントリーポイントではないかと考えられます。(現金主体で住宅を購入するため目先の金利動向に左右されない方にとっては、特にそう言えます。)例えば、Zillowグループのエコノミストも、「2019年の不動産市場は、前年までの売り手市場から、買い手市場に転換する」と述べています。2019年といっても、住宅の購入をご検討の方は、例年住宅市場が穏やかなこの冬の間に良いディールがないか市場を注視されることをお勧めします

一方で、住宅の売却をご検討される方の立場で考えますと、ピークアウトした市場が緩やかにでも回復するにはこれから1年以上の時間がかかると思われ、また2017年中のような過熱が再来することは当面考えられないため、売却の好機を長く待つ意義は小さいと思われます。むしろ、早期売却や、リターンが高い物件への再投資など、不動産市場が短期間に上下するリスクを抑えつつ資産の回転効率を重視した出口戦略を検討する価値があります。

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