お取引のポイント

「審査簡単」アパートのデメリット

NYCで「審査簡単」、時に「光熱費込み」を宣伝したアパートとは、個人家主が所有する物件(一軒家、タウンハウスなど)です。職歴が浅い方や、米国に初めて来られる方には一見魅力的かもしれませんが、賃貸専用物件と比べ、管理が不十分で品質が良くない、審査が主観的、クレジットヒストリーができない等、いくつものデメリットがあります。また、不動産会社はこれら個人家主の物件や自己所有物件の空室を埋めることを優先するため、お客様が求める高品質の賃貸専用物件があっても敢えて紹介しないという、根本的な利益相反を抱えています。

これらには管理会社が介在しないのが普通で、お申し込みの審査も、個人家主自身が行います。不動産会社はこれらの個人家主物件を独占的に(=他社に取り扱わせない約束で)取り扱うことが殆どです。その動機は(1)家主が将来物件を売却する際に仲介することを狙い、それまで、家主に代わって借り手を見つけることで関係をつなぐ (2)クイーンズやブルックリンの物件の場合、比較的安い賃貸物件として確保することで賃貸による収益機会の裾野を広げる、といったところにあります。

「審査簡単」物件には、大きなデメリットがあるものの、不動産会社は家主との関係を良好に維持することが最重要なため、それら家主所有物件になるべく空室を作らないよう、お客様に積極的に勧める傾向があります。酷い例では、日系不動産会社から質の低い家主物件ばかり何件も案内され、案内中に見かけた同価格の賃貸専用物件を見せてほしいと依頼して初めて、渋々のように通常の賃貸専用物件を案内された、という話も聞きます。そういう不動産会社は、一回きりのお取引になる借り手のお客様の代理人ではなく、個人家主の代理人になっているのです。

「審査簡単」物件のデメリットは次のようなものです。

1.審査に一貫性や公平さがない(承認基準、審査にかかる日数など。理不尽な承認取消もあり)
  • 例1: 申込書の受付担当者は「過去の申込者の例に照らして、問題なく承認されるだろう」と言っていたが、家主に数日間決定を先延ばしにされた挙句、申込みを却下された。却下の理由も、デポジットを積み増すなどの代替案も、示されなかった。
  • 例2: 申し込みが簡単に承認され、引越しの準備をしていたが、引越し前日になって家主が承認を取り消し、次のアパートを大至急探す必要に迫られた。

大手ディベロパーの賃貸物件のように専門の組織がお申し込みを審査するのではありませんので、審査の基準に一貫性がなく、予見可能性が低いという問題があります。例えば、同じ学生という身分、同じ支払い条件、海外から初めて移住して来られる方が複数いらっしゃるとして、家主は普段そういった人たちの入居を承認しているのに、ある人だけが何の説明もなく承認されないという場合です。加えて、会社組織が審査を行いませんので、お申し込みを公平に、差別なく審査しているかを知る術がありません。そういった内部統制を設け、家主の非合理的な「好み」による選別を防ぐ仕組みがないのです。

大手の賃貸物件の場合は、申込者の支払い能力が審査基準に全く届かない場合を除けば、直ちにアプリケーションを却下することは少ないです。デポジットを多く求めたり、数か月分の家賃の前払いを求めるなど、何らかの対案を提示してきます。申込者がそれらに応じると承認されます。個人家主の場合はそういった手続きを踏むとは限りません。

審査に要する日数もまちまちです。家主が休暇をとっていたり海外に滞在中だったりという事情のせいで、家主への連絡が取りにくく審査が進まないことがあります。

2.アパートの品質(内装のレベルや設備の状態)が期待外れ

管理会社が入っているアパートに比べると、個人家主物件のアパートの状態には大きなばらつきがあります。「キレイ」「清潔」を重視される日本人のお客様が通常期待される水準には到底届かないことが多いようです。私たちが、きちんと管理された賃貸専用物件にお客様をお連れしますと、「これまで内覧したアパートの中で一番綺麗」というコメントを頂くことが度々あり、逆に私たちが「他社はお客様をどんなところにご案内したのだろうか?」と驚いてしまうこともあります。

問題は内装だけではありません。ボイラー、エレベーター、外壁、屋上はきちんとメンテナンスされているでしょうか? ボイラーやエレベーターが古くて故障が多いと、修理を一度したと思っても根本的にはなかなか解決せず、生活に不便を強いられます。

3.設備の修理がかなり遅い

米国の設備に関しては、日本でご経験されるより高い頻度で故障やトラブルに遭遇します。アパート内では食器洗浄機、洗濯機・乾燥機、ディスポーザーといった機器の故障や水漏れ、建物の設備ではエレベーターやボイラーの故障に遭遇される方も多いです。個人家主の物件には築浅のものは滅多にないため、特に問題が起こりがちですが、迅速に修理業者を手配し、修理完了まで見届けてくれるかどうかは、家主次第となります。家主が昼間に別の仕事をしていれば、直ぐに連絡がつながるとは限りません。傾向としては、プロフェッショナルな管理会社が入った物件に比べ、個人家主による修理対応はかなり遅く、なかなか修理をしたがらないことさえあります。(エレベーターやボイラーの修理費用は高額ですので。)

皆様は「日系不動産会社なら、対応が良い家主の賃貸物件を扱っているはず」と期待されるかもしれません。中にはそういう家主もいらっしゃいますが、家主も様々ですので、知る限りそれは希望的観測に過ぎないと言わざるを得ません。

4.クレジットヒストリーができない

アメリカで生活を始める方にとって、クレジットヒストリーを積み上げることは大切な問題で、いずれ通常の賃貸物件にお引越しされる際や、その後のあらゆる生活の便のために、良いクレジットヒストリーが欠かせません。そのための第一歩が、家賃、電気代、ケーブル代の支払い実績を作ることです。しかし「審査簡単」物件にお住まいになると、それが困難になります。

「審査簡単」物件には、「ユーティリティー費用込み」のものがたくさんあります。借り手の名義で電気・ケーブルを契約しませんので、クレジットヒストリーが出来ません。

また、家賃の支払いを現金で求められるケースもあり、そうなると借り手が家賃を支払った記録が残りません。賃貸物件をサブリースされる場合ももちろん、支払い記録が残りません。

このような状況では、米国で次の生活に移るステップがなかなか作れず、その後の米国生活の様々な局面(引っ越す、クレジットカードを作る、クレジットカードの限度額を上げる、車のローンを申し込む、低い金利でローンを受ける等)で不利になります。

5.割高

「ユーティリティー費用込み」の家賃は、ユーティリティー費用を多めに見積もっているので、割高です。お一人でお住まいになるなら特に、ユーティリティー費用が含まれている意味が見出せません。そういう賃貸の本当のターゲット顧客は、1年未満の短期滞在者か、シェアハウスの希望者なのです。

以上のようなデメリットがありますので、私たちは「審査簡単」な個人家主物件を取り扱っていません。(コンドミニアムやコープのサブリースについては、良いものがあればご紹介します。コンドミニアムやコープの場合は、管理組合が審査しますので「審査簡単」ではありません。)

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