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物件評価

不動産会社の所有物件を買ってはいけない ~ 某社の転売事例、調査の重要性

東京に本社を置き、日本在住の日本人をニューヨークの不動産投資に積極的に勧誘している在米不動産会社 R は、ニューヨークの不動産の購入を仲介するのではなく、自らが一度購入した物件を投資家に売却しています。その短期間の転売で、驚くべき額のマージンが上乗せされています。

実例を挙げてご説明します。対象物件の取引履歴を購入前にお調べになり、合理的な判断ができる方なら、この不動産会社が勧める取引に応じることはないはずです。

■ 事例1
対象物件
2014年にディベロパーが全面改装したトライベッカのコンドミニアム
スタジオ(ワンルーム) 2階 広さ 475 ft²

93Worth
転売前の売買
R社による転売
取引日
2019年4月13日
2019年6月24日(73日後)
売主
ある個人
Global Real Estate USA, Inc.
売主の代理人
Sotherby's International Realty
-
買主
Global Real Estate USA, Inc.
都内のある大学の投資運用会社
買主の代理人
-
売主と同じ(両手仲介)
取引価格
$ 930,000
$ 997,000
R社の転売益
$  67,000 (+7.2%)


登場する Global Real Estate USA, Inc. は、R社が投資物件の自己勘定売買や管理の受け皿として用いる関連会社です。

ニューヨークの不動産売買では、売主側不動産会社と買主側不動産会社の仲介手数料(標準では 3% ずつ)は、どちらも売主が負担する慣習です。買主には仲介手数料が一切かかりません。この取引でも、日本の投資家がもし R社の仲介で前の個人所有者から直接物件を購入していれば、仲介料を負担する必要がありませんでした。(その場合、R社は売主から価格の 3%を仲介料として受取るはずでした)。 67万ドル(約7400万円)、7.2% もの上乗せは常軌を逸しています。

■ 事例2
対象物件
1962年築、ミッドタウンイーストのコンドミニアム
リノベ済みスタジオ 4階 広さ 500 ft²

321 East 48th
転売前の売買
R社による転売
取引日
2018年8月22日
2019年10月10日(1年49日後)
売主
ある不動産エージェント個人
Global Real Estate USA, Inc.
売主の代理人
-
-
買主
Global Real Estate USA, Inc.
関東のあるオーナー企業
買主の代理人
-
売主と同じ(両手仲介)
取引価格
$ 565,000
$ 651,680
R社の転売益
$  86,680 (+15.3%)


全体的にニューヨークの不動産価格があまり上がっていない時に、この転売価格は驚くべき高さです。

この物件を R社が購入したのは、売主が物件情報をマーケットに出してから 299日後でした。主要部分がリノベートされていたにも拘わらず買い手がつきにくく、$565,000 でも割高な物件だと想像されます。実際、直近の 2017年に同じ建物で取引されたその他のスタジオ3戸は、$495,000 から $555,000 の範囲で成約しました。(注: 物件の回転が速いニューヨークで、数か月も買い手がつかないのは買い手に危険信号と看做され取引に良い影響を与えませんので、通常は割高な値付けを避けます。)

R社が転売に要した日数も 1年少しと長かったのですが、それは元々の売りにくさと転売価格の高さを考えると当然です。それでも、R社は保有中に損をしていたわけではなく、貸し出して家賃収入を得ています。

この物件を R社が購入したときの価格や、同じ建物の他のユニットの売買価格を調査していたなら、投資家は R社の転売価格で物件を購入しようとは普通は考えないでしょう

不動産会社自身が物件を売買すると、市場原理が働きません。こういった異常な値上げを伴う転売が起きたのは、この不動産会社 R が自己勘定取引をしたからです。また、R社は転売に当たって両手仲介を行った(=買主が自身を代理する別の不動産会社を起用しなかった)ので、必然的に利益相反が起こります。そういった状況をあえて作り出した R社の行動原理は、お客様の利益を高めることでは全くなく、お客様の利益を犠牲にした自己利益の追求なのです。

お客様が不動産をご購入される際は、売主や売主側の不動産会社とは違う、買い手のお客様だけの代理人となる不動産会社(=バイヤーズ・エージェント、例えば弊社)を必ず起用して下さい。弊社は、お客様の利益を最大化するために物件をお探しし、売主側不動産会社と交渉します。その仲介手数料は売主が支払います。

キャップレート(Cap Rate)を高めるためにも、高い売却益を上げるためにも、その物件をいくらで買うかが重要です。この第一歩を誤ると、目標収益率を達成できなくなったり、将来予測が狂った際のバッファを失います。そのような事態を防ぐために、まず、対象物件の売買・賃貸取引の履歴を知ること、類似物件と比較することから始めませんか。ニューヨーク不動産マーケットに関するご質問は弊社にご連絡下さい。

註: 掲載した取引情報の全ては、一般に無料で公開されている情報によります。


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