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図解☆米国不動産市場と代理人モデル:他の不動産会社と並行してご依頼なきよう

日本のお客様の多くが、「不動産会社はそれぞれ独自の物件を持っている」とお考えです。そのため、ニューヨークで住宅探しをされる際にも、不動産会社によるサービス内容と仲介手数料の違いを理解され、物件選びが佳境に入ってもなお、複数社に同じ問い合わせを続ける方がいらっしゃいます。そういった行動は、物件情報が分断された日本でのご経験が背景にあるようですが、米国(特にニューヨーク市)では無駄となり、むしろお客様が不利益を受ける可能性さえあります。その理由を、米国不動産市場の仕組みからご説明します。

2020年12月22日 更新

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《 複数不動産会社を並行してお使いになるべきでない理由 ~ 米国の不動産市場と代理人モデル 》

上の図は、ニューヨークの不動産市場における情報の流れと、不動産会社の役割を説明したものです。

  1. 各不動産会社は、貸主・借主にとっての取引機会や利便性の最大化を図るため、ほとんど全ての物件情報をデータベースで共有しています。家主が特定の不動産会社に広告を依頼した「専属物件」も、普通はデータベースに登録されます。
  2. 不動産会社には、家主を代理して広告する "Listing Agent" と、借主を代理する "Tenant's Agent" (不動産を購入される場合は "Buyer's Agent")の二種類があり、通常は一方のみを代理します。Listing Agent(左側)が自ら借り手を見つけ、借主の代理を兼務する "Dual Agent" になる場合もありますが、それには利益相反が避けられず、Listing Agent が投資家から管理を委託された住宅を強く勧める動機があるため、米国ではどの州でも Dual Agency は推奨されていません(法律で禁止する州もあります)。弊社は Dual Agent でなく、Tenant's Agent です。
  3. Tenant's Agent は、ご依頼を受けて、市場でお勧めできる物件を所有する不動産会社(または賃貸会社)にコンタクトし、内見をアレンジします。また、お申し込みの要件を確認したり、書類の準備についてアドバイスしたり、合理的な場合は条件緩和の交渉を行います。

最近の無料不動産情報サイトで物件を広告する不動産会社は全て、家主側の "Listing Agent" であす。借り手のお客様のために市場から他の(彼らにとっては競合する)物件を探してくれることは、決してありません。

借り手の代理人となる不動産会社は、用いるデータベースの種類によって若干の違いはあるものの、ほぼ同じ情報にアクセスできます。したがって、不動産会社による違いは次の点にあります。

  • 条件に合った物件情報を素早く探し出す能力
  • 家主側不動産会社の米人エージェントとのコミュニケーション能力
  • データベースに記載されず、一般の方向けにも公開されていない様々な情報により、優良物件に絞り込む知識
  • どのエリアや物件を勧めるかのセンス、提案力
  • 仲介手数料

このため、詳細な物件調査や内見のアレンジを複数不動産会社に並行してご依頼されることは、お客様から依頼を受ける複数の不動産会社、そしてそれらから重複した問い合わせを受ける家主側エージェント(もしくは賃貸会社)全ての労力を無駄にします。

それだけでなく、お客様が次のような不利益を被る可能性もあります。

  • 弊社であれば手数料なしで仲介できる物件に、他社を通して、またはご自身で、照会したり内見に訪れ、その後で弊社を通して同じ物件にお申し込みされますと、弊社は仲介料を無料にできなくなります。これは、賃貸会社がその他社を「お客様の代理人」と見做し(ご自身でコンタクトされた場合は Tenant's Agent が介在せず来客したと認識し)、弊社に仲介手数料を支払わないためです。
  • お客様が先にコンタクトされたその他社は、ご案内した物件に関する取引の権利を主張します。そのため、もし賃貸会社が弊社に仲介料を支払った場合、お客様はその他社から違約金を請求される恐れがあります。
  • 並行してお問い合わせされていることが分かると、どの不動産会社からも、また家主からも、本気で借りる気があるお客様だと見做されず、相手にしてもらえなくなります。

当チームの仲介をご希望でしたら、他社から紹介された物件を開示頂き、さらに他社へのお問い合わせを終了されてからお願い致します。


《 情報が分断され、代理人モデルが機能していない日本の不動産市場 》

日本の不動産市場では、米国と違って情報が囲い込まれているため、不動産会社の代理人としての役割が不完全で、お客様は非効率な問い合わせを強いられる仕組みです。

  • 不動産会社はそれぞれ固有の物件情報を持っており、自らが広告する物件への借り手を、他社を通さず見つけようとします。不動産業界用のデータベースがあるものの、利用が進んでいません。
  • お客様がご自身の取引機会を最大化するためには、複数の不動産会社に同時に照会しなければなりません。ある会社が、別の会社にはない物件情報を有している可能性が高いためです。
  • 殆どの不動産会社が "Dual Agent" になっており、借り手の利益を最大化する代理人ではありません。各不動産会社は、自分のネットワーク内で貸し手と借り手を繋げ、双方から仲介手数料を受け取り、顧客にとって最良の取引機会をネットワーク外から探そうとしないからです。

弊社が他社と並行したご依頼をお引き受けしない理由は以上の通りです。これにより、弊社は「借り手のお客様のみの代理人」として、Dual Agent にならず利益相反も起こさないという、ニューヨークの日系不動産各社にはない最大の強みがあります。

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