賃借・売買の着眼点

図解☆米国不動産市場の情報の流れと代理人モデル:他の不動産会社と並行してご依頼なきよう

日本のお客様の多くが、「不動産会社はそれぞれ他社にない物件を持っている」とお考えです。その結果、一度複数の不動産会社にコンタクトしてサービスと手数料の違いを理解され、物件選びが佳境に入ってもなお、複数社に同じ問い合わせを続ける方がいらっしゃいます。そういった行動は、物件情報が分断された日本でのご経験が背景にあるようですが、米国(特にニューヨーク市)では無駄となり、むしろお客様が不利益を受ける可能性さえあります。その理由を、米国不動産市場の仕組みからご説明します。

《 複数不動産会社を並行して使うべきでない理由 ~ 米国の不動産市場と代理人モデル 》

上の図は、ニューヨークの不動産市場における情報の流れと、不動産会社の役割を説明したものです。

  1. 各不動産会社は、借り手・貸し手にとっての取引機会や利便性の最大化を図るため、ほとんど全ての物件情報をデータベースで共有しています。家主が特定の不動産会社に広告を依頼した「専属物件」も、普通はデータベースに登録されます。
  2. 不動産会社には、家主を代理して広告する “Listing Agent” と、借り手を代理する “Tenant’s Agent” (物件購入の場合は “Buyer’s Agent”)の二種類があり、通常は一方のみを代理します。専属物件を持つListing Agent(左側)が、自ら借り手を見つけ、家主と借り手双方の代理人 “Dual Agent” になる場合もありますが、別の不動産会社が借り手を連れてくることはもちろん構いません。(尚、Dual Agentの場合は利益相反が避けられません。弊社は家主を代理しませんので、Dual Agentにはなりません。)
  3. 借り手側の不動産会社は、家主側の不動産会社にコンタクトし、データベースに見つかった物件が本当にお客様のご希望に合うかを確認したり、内見をアレンジします。また、お申し込み書類を確認したり、条件緩和の交渉を行います。

借り手の代理人となる不動産会社各社の違いは、アクセスできる情報自体ではなく、次の点にあります。

  • 条件に合った物件情報を素早く探し、データベースにない情報によりさらに絞り込む力量
  • どのエリアや物件を勧めるかのセンス、提案力
  • 仲介手数料

一度複数の不動産会社にコンタクトし、これらを理解されてなお、詳細な物件調査を複数社に同時進行で依頼されることは、お客様だけでなく、お客様から依頼を受ける複数の不動産会社、そして重複した問い合わせを受ける家主側不動産会社を巻き込んだ、多大な労力の無駄となります。

それだけでなく、お客様が次のような不利益を被る可能性もあります。

  • 他社を通して、弊社であれば仲介手数料無料にできるが他社は無料にしない物件を照会したり内見に訪れ、その後で弊社を通して同じ物件にお申し込みされますと、仲介料を無料にできなくなります。これは、家主がその他社を「お客様の代理人」だと見做し、弊社に仲介料を支払わないためです。
  • お客様が先にコンタクトされたその他社も、案内した物件に関しては、お客様が後から弊社を使ってご契約されても、数か月は自社の顧客だと主張します。これは不動産業界で標準的な契約・慣習です。その結果、お客様は他社から違約金を請求される恐れがあります。
従いまして、弊社による仲介をご希望の方には、他社から紹介を受けた物件を開示頂き、さらに他社へのお問い合わせを終了されてから、とお願いしています。

《 情報が分断され、代理人モデルが機能していない日本の不動産市場 》

日本の不動産市場は、米国と違って情報が寡占されているため、不動産会社の代理人としての役割が不完全で、お客様は非効率な問い合わせを強いられる仕組みです。

  • 不動産会社はそれぞれ固有の物件情報を持っており、自らが広告する物件への借り手を、他社を通さず見つけようとします。不動産業界用のデータベースがあるものの、利用が進んでいません。
  • お客様がご自身の取引機会を最大化するためには、複数の不動産会社に同時に照会しなければなりません。ある会社が、別の会社にはない物件情報を有している可能性が高いためです。
  • 殆どの不動産会社が “Dual Agent” になっており、借り手の利益を最大化する代理人ではありません。不動産会社は、自分の顧客である家主と借り手同士を安易に繋げ、双方から仲介手数料を受け取る一方で、顧客にとって最良のビジネスチャンスを自社以外のネットワークから探そうとしないからです。

米国においては、住宅探しのお問い合わせ先を一つの不動産会社に絞ることは、単に効率的なアプローチであるばかりでなく、弊社なら「お客様のみの代理人」として、家主の代理人を兼ねる他社にはない価値をご提供することができます。

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