コープ(Co-op)購入の利点とハードル

マンハッタンと周辺の住宅には、主にコンドミニアムとコープがあります。前者は日本でいうマンションです。後者はNYに独特の所有形態で、購入条件が厳しくその後の制約も多いですが、一般的にコンドミニアムより割安なので、ご購入者次第で良い購入対象となります。しかし、比較的短い年数で売却する可能性を残す場合や、貸出が主目的の場合はお勧めしません。購入から売却までの重要ポイントを幾つか簡単に解説します。

「コープの購入は経験豊富な不動産エージェントがいれば難しくない」という内容の宣伝を見ますが、不動産エージェントの経験や能力以前に、購入対象としてコープが不向きなお客様がいらっしゃいますので、その判断のためには正しくコープをご理解頂かなくてはなりません。

コープとは何か

コープ (Cooperative; co-op) は建物全体を所有する会社組織です。コープのユニットを「買う」というのは、実は、コープの株式をそのユニットに決められた数だけ売主から購入することで実現しており、法的には、株主でコープ全体を共同所有している形です。

ニューヨークシティの住宅の 7 割 から 8 割をコープが占めます。

株主から選ばれた管理組合があり、そのボードメンバーがコープの経営(つまり全面的な意思決定を伴う管理)を執り行います。決算を作成したり納税を行い、その結果で管理費が決まります。

なお、コープと言っても様々で、超高級住宅街のコープから、人気の地区で高い水準に良くメンテナンスされたコープ、そして安さでしか目につかないようなコープもあります。このページでご説明するのは、比較的高級でしっかりとメンテナンスされたコープです。安ければ購入・維持・売却の条件が緩く、逆に注意を要するケースが出て来ます。

コンドミニアムより低価格

物件それぞれですが、以下でご説明するように購入・維持・売却の条件が厳しい代わりに、品質が同程度のコンドミニアムと比べ、2割ほど安いことが多いです。条件を満たせる方であればお得なお買い物になります。賃貸住宅やコンドミニアムより人の入れ替わりが少ない環境が手に入ります。

購入後の経費もコンドミニアムより低い

管理費(メンテナンスフィーとも呼ばれ、コープの場合は固定資産税が含まれる)は年により上下することがありますが、平均的には同程度のコンドミニアムより低いことが多いようです。しかし、もちろん例外がありますので、十分な事前調査が必要です。

購入時のハードル

コープ住宅を(コープの株主としてですが)購入されたい方を、管理組合が選別します。その意図は、将来の隣人になって欲しい人を選ぶということで、掘り下げると、次のような観点に集約されます。

  • コープを共同所有する隣人としてふさわしい品性・人柄を備えているか
  • コープに納める管理費(メンテナンスフィー)を継続して支払う能力があるか
  • 長期間居住してコミュニティーの安定要素になってもらえるか

これらの実現のため、次のようなハードルをクリアする必要があります。

  • 推薦状が必要(典型的には Personal Reference Letter 3通、加えて Professional Reference Letter 数通の場合も)
  • 管理組合のボードメンバーによる面接(コープによります)
  • 資産や収入要件の水準がコンドミニアムより高い(ギリギリの資金でのご購入は勧められず、管理費に対する収入の余裕も求められます)
  • 頭金(ダウンペイメント)の必要割合がコンドミニアムより高く、購入価格の 20-25% 以上、50% や 75% の場合も

このように要件が厳しいため、売主側のエージェントにとっても、購入希望者がコープの審査に通りそうかは大きな関心事です。内見時にはいろいろと話しかけてきて、服装や態度も含めて人物を見定め、ご職業や勤務先について詳しく尋ねてきたりもします。ご購入希望者は、この非公式な関門を突破しなくてはなりません。

コープの決算を分析する必要

金融や会計に明るい人物がボードメンバーになり、コープの運営が適正になされている場合(更には、ボードが運営を外部管理会社に委託せず、ボードの有能な人物により税金が増えないように上手に経営されている場合)もありますが、適切に運営されていない例を聞くこともあります。コープの財務が健全か、株主から集める管理費が不足していないか、必要性が小さい経費またはお客様の価値基準にそぐわない程度の経費がかかっていないか、将来も持続可能な財務状況か、ガバナンスは適正か等を吟味しなくてはなりません。

当チームは大手金融機関等で様々な企業の財務・リスク分析を10年以上行った経験がありますので、この点でもお客様のお役に立ちます。

貸出し(サブリース)時のハードル

一般的にはコープは主たる住居としてのみ購入可能ですが、例外的に、別荘もしくは投資用としての購入を認めるコープもあります。ただ、投資用としての購入を認める場合も、コープは貸し出しを抑制したり良い借り手を求めているので、厳しいルールがあります。始めから投資を目的とした購入には不向きです。

  • 購入から数年経ってからでないと貸し出せない
  • 貸し出している間、コープの管理費が割り増しされる
  • 借り手の審査にも推薦状や面接が必要になるうえ、審査に時間がかかる(月に1度しか集まらないボードもあり)

これらの理由で、家賃を同水準の賃貸物件より低く設定しないと借り手を見つけにくいため、マーケットの同品質の物件より家賃収入は低くなりがちです。

売却時のハードル

売却時にはコープ独特の手数料がかかるうえ、ご自分が購入時に経験されたように、適格な購入希望者を見つけなければならないというハードルがあります。

  • Flip Tax (Transfer Fee)

     “Tax” という呼び名ですが、これはコープが売主からから徴収する譲渡手数料です。 (買主から徴収することもあります。) コープは住民の簡単な入れ替わりを抑制し、かつ安定した経営(=収入源)を求めているため、このような手数料を科します。
  • 購入時の審査に耐えられる、特に頭金をコープの規定以上に支払える買主を見つけなければならない

     早く買い手を見つけるために、市場に出ている同程度の物件より売却希望額を低くしなくてはならないことがあります。

以上の理由から、比較的容易に購入・賃貸が出来るコンドミニアムを好む方が多くなります。しかし供給数が限られているため、価格が吊り上がります。

コープ住宅の購入に適した方

逆に言うと、既にニューヨークにお住まいの方がご自分の住居をお探しの場合、コンドミニアムより割安なコープをご購入になる意義があります。

古くからの高級住宅地には、住民の入れ替わりや賃貸に出されるユニットが少ない、コミュニティ意識の強いコープが多数存在します。コープ全体の資産価値を守り、運営コストを削減するべく、管理組合がしっかり経営しています。豪華なアメニティはほとんどなく、毎月の管理費も低めなことが多いです。

当チームは、管理がしっかりしたコープの売買や賃貸の経験があり、実際のお取引においては、上記以外にもアドバイスを差し上げるポイントがあります。ご紹介できる不動産専門の弁護士の中にも、コープのボード及びCFOを務めて実務に精通した人物がいます。コープのご購入にメリットがある方には、スムーズにご購入手続きが運ぶようサポートしますので、是非ご連絡下さい。


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