アメリカ不動産を購入する外国人の購入目的、日本人投資家との違い
アメリカの不動産を購入する外国人(=非米国人)のうち、日本人は国籍別で10番目の多さであるものの、割合は約1%に過ぎません。2%の年もありましたが、2022年3月までの1年間では約1%に減少しました。
主流の外国人購入者のプロファイルや購入目的を解説し、それ故にアメリカ不動産投資において留意すべきことを考察します。
2022年9月27日 最終更新
どの国の人が多く買っているか
国籍別に米国住宅の全購入数を集計すると (注:オレンジ色の折れ線グラフと右軸を参照)、米国人を除いては、1位カナダ、2位メキシコ、3位中国 (台湾を含む)、4位インド、5位ブラジル、6位コロンビアです。この統計は、米国外に居住する外国人の他に、非移民ビザでアメリカに居住する外国人と、移民となって2年未満の外国人を対象としています。
アメリカに近い国が多い: メキシコとコロンビアが増加、中国とインドは減少が続く
不動産購入者を国籍別にみると、カナダ11%、メキシコ8%、ブラジル3%、コロンビア3%と、北米と中南米の4か国で25%を占めます。2年前の2020年3月期は28%、2016年3月期は25%でした。
- メキシコは7%を記録した2011年以降、1-2ポイント高い水準で推移
- コロンビアは2%を記録した2016年以後、1-2ポイント高い水準で推移
中国とインドの割合はそれぞれ6%と5%で、両者で11%です。2年前の2020年3月期は18%、2016年3月期は21%でした。特に中国の減少が目立ちます。
近い国から「セカンドホーム」としての購入が多い
上のチャートの棒グラフは、国別の住宅購入目的のうち、非賃貸用途のみの内訳を抽出しています。つまり投資目的を除いて、主たる住居(プライマリーレジデンス)、貸し出すつもりではない純然としたセカンドホーム、留学中の子の住まいのいずれかの割合です。
カナダ、メキシコ、ブラジルといった米国に近い国の出身者は、プライマリーレジデンスとしてアメリカ不動産を購入するだけでなく、非賃貸用の、つまり自分用のセカンドホームや留学した子の住居として購入することが特徴です。カナダでは61%が、またメキシコとブラジルでもそれぞれ9%と15%がその目的です。プライマリーレジデンスとして購入した人たちは大部分がアメリカに居住する人たちですから、米国外に居住しながらアメリカ不動産を買った人(特にカナダ人)は、それなりに多くの割合がセカンドホームや子の住居として購入したことになります。
インドと中国出身者でセカンドホームとしてアメリカ不動産を購入した人は殆どいません。プライマリーレジデンスとしてアメリカ不動産を購入した人の割合はまずまず高く、その理由は、アメリカへの移民が特に多いことです。
ここまで、国籍別「購入数」と「非賃貸用途の割合」から考察してきましたが、両者を掛け算した「非賃貸用に購入された住宅の数」を下に示します。(上のチャートの棒グラフは割合でしたので、混同のないようご留意下さい。)
- カナダが圧倒的1位、同じく北米のメキシコが2位
- 南米のブラジルとコロンビアは5番目と6番目だが、購買力平価換算後の一人当たりGDP (ブラジル84位、コロンビア85位、一方でメキシコ69位、中国本土75位、カナダ23位) を勘案すると、これら6か国以外の国と比べて経済力以上の大きなプレゼンスがある
妥協した投資物件は売却しにくい
ニューヨークには投資用に住宅を購入する人がそれなりに多いですが、以上のように、プライマリーレジデンスとしての他、米国外からセカンドホームや家族用として住宅を購入する人が多数います。そういった人たちは、住環境、間取り、使い勝手など、あらゆる快適さを極力妥協したくない購入者です。投資物件を購入する方は、その存在を念頭に、投資用だからといって価格以外の要素を安易に割り切らず、住む人の視点を忘れないことが大切です。そうでなければ物件を売却する際、非賃貸用に購入する人への訴求力がなく、希望価格で早く売却することが困難になります。

では、投資物件を選ぶ際にどのような誤り、つまり割り切りが見られるでしょうか。続く次の論点は note で近日公開します。