サービスアパートメントで仮住まいという手法は時代遅れに

サービスアパートメントとは、不動産会社が賃貸専用住宅や個人の投資物件を借り上げて家具を入れたものに過ぎません。専門の会社なら品質が高く安定していますが、一般の不動産会社が個人投資家から借り上げてアパートとして運営する物件に同じ品質を求めるのは困難です。税別 $5,000 前後のサービスアパートの品質は、年間契約できる通常のアパートなら家賃 $3,000 程度の水準 (マンハッタンではごく普通の品質)と考えるのが妥当です。

長期お住まいの賃貸物件を探す間、サービスアパートで仮住まいするのはお勧めできません。ご希望の方には専門の会社の物件をご紹介しますが、駐在員向けとしては、現在では合理性がない古い手法です。ニューヨークで現在賃貸住宅探しに適した方法は、第一にホテルに滞在されること、第二には、日本にいる間から手続きを始め、可能であれば契約まで日本で完了することです。それには市場要因、法的要因、テクノロジー要因があります。

テクノロジー要因

携帯端末で使えるビデオ通話サービスが増加したり、動画の共有が容易になり、内見のバーチャル化が可能になりました。しかも、従来は多くの場合で私たち自身が物件を直接訪れて、写真やビデオを撮影してお客様にお送りしたり、FaceTime、Skype や Zoom で中継することでご内覧頂いて来ました。(但し、撮影や遠隔での入居申込みを受け付けない物件もそれなりに存在しました。)

しかし、2020年3月から、新型コロナウイルスがニューヨーク市内で広がり始めたことを機に、多数の賃貸事務所が対面での内覧受付時間を大幅に縮小し、代わりに賃貸会社自身がビデオによるバーチャルツアーを行ったり、VRソフトウェアを導入してお客様に自在にバーチャルに物件をご覧頂くという転換が、急激に広がりました

これまでは、特に日本企業から赴任されたばかりの方は、週末まで待って物件をご覧になる方が多かったようですが、バーチャル化により、平日に職場からでもご自宅からでも、お好きな時間にご覧になれます。手続きの面でも、お申し込みから契約までインターネットで完了できる大手賃貸住宅が大多数です。

新型ウイルスの流行が収束に向かえば、お客様が物件を直接ご覧になる選択肢も再開されるはずですが、多数の人がバーチャルな内覧だけで住宅を選び申し込むようになると、直接見に行く方は、申込みまでの競争において不利ということを念頭に置かねばなりません。

市場要因 その1

現在のニューヨークシティでは賃貸需要が非常に高いため、良い物件には数日で申し込みが入り、週末を越すと残っている可能性はまずありません。そのため、毎週末に内見に出かけても、その時に決めなければ申込物件候補が増えず、新居での生活の立ち上げが遅れます。住所が確定しないと、ATMカード、ソーシャルセキュリティーカードや運転免許証の送付先を変更する必要があるなど、いろいろと不便です。

さらに、一般的に、良い物件は月初になくなります。サービスアパートでの滞在を積極的に勧める大手他社は、ご駐在の方々をご案内する時期をずらして労働力を分散していますが、後回しにされると良い物件が残りません。月の第1週に住宅探しを終えることが重要で、そのためにはサービスアパートを1か月間契約するのは無駄であり、ホテルでの1週間の滞在で足りることが殆どです。

法的要因

1か月未満の賃貸は、ニューヨーク州の法律で禁止されています。1週間単位での契約を広告したり、「お住まいが見つかれば1か月未満への滞在期間短縮と払戻し可能」と規約で定めている日系不動産会社が複数ありますが、重大な法律違反を犯しています。(➡ ご参考: ソリューション 《 コンプライアンスを徹底, コラム 《 NY市、違法な短期賃貸の取り締まりを強化中

また、それら違法賃貸に使われる物件は、管理会社が違法賃貸を黙認し、非住人が簡単に出入りできる、管理(セキュリティ)が甘い物件ということを意味します。(➡ ご参考: コラム 《 NYCの投資物件(下)全戸数の21%を日本人投資家が買ったコンドミニアムビル その後) 安全性を犠牲にしてまで、違法な短期賃貸アパートをご利用になりますか?

市場要因 その2

ニューヨークシティではホテルが過剰なほど増え、客室料の上昇が長期にわたって抑えられていることもあり、ホテルに短期間滞在する方が費用面で大幅にお得です。ヒルトンなど大手グループの系列ホテルでも、$100 から $200 で宿泊できることが多くあります。(例外は、国連総会が開催される9月第三週あたり。)

マンハッタンの平均客室料は、2019年に 2013年以来の最安値を記録しました。それにより借入の返済が滞るホテルが出てきたほどです。(Wall Street Journal, "Defaults Are Rising in Sluggish New York City Hotel Market", February 18, 2020.)

サービスアパートメントを長期賃貸住宅を探す間の仮住まいとするマーケティングが日本企業に受けた 10年から 20年前は、日本人がマンハッタンのコンドミニアムにこぞって投資した後の時期に重なり、そういった投資物件がサービスアパートメントに使われました。当時は有意義な手法だったかもしれませんが、上でご説明した通り、現在のニューヨーク市では適さない古典的アイデアとなりました。また、バブル期以降に購入された投資物件は徐々に老朽化しています。